情報システム部門、いわゆる「情シス」がいない会社でも、事業は回ります。実際、中小企業の多くは専任のIT担当者を置いていません。問題は情シスがいないことではなく、「困ってから都度対応する」体制のまま、会社がITに依存する度合いだけが増えていくことです。
「うちには情シスがいないけれど、このままで大丈夫だろうか……」と感じていればぜひご参考ください。情シス不在の会社で実際に起きていることを整理し、現実的な3つの選択肢とその選び方を解説します。
経理担当がいない会社は、ほとんどない
経理担当がいない会社はまずありません。お金の管理は「誰かがやるべき仕事」だと全員が認識からですね。
一方で、IT担当がいない会社はごく普通に存在します。総務の方や社長自身が「パソコンに詳しいから」という理由で兼任しているケース、あるいは誰も担当しておらず、困ったときに付き合いのある業者へ都度連絡するケースが大半です。
これは怠慢ではありません。経理と違って、ITは「何を任せる仕事なのか」が見えづらいため、担当を置くという発想自体が生まれにくいのです。まずはその全体像から整理しましょう。
情シス不在の会社で起きていること
弊社は他社で構築されたシステムやWordPressの保守を引き継ぐ機会が多いのですが、引き継ぎの場面では、その会社のITの管理状態がよく見えます。症状は会社ごとに違っても、根は共通しています。ITに関する記録と判断が、特定の個人へ依存が多いことです。
- 誰がどのサービスのアカウントを持っているか一覧がどこにもない、退職した人のアカウントが残っている、確認する方法がない
- 業務が特定の人のExcelと手作業で回っていて、「あの処理は◯◯さんしかわからない」状態になっている
- システムのトラブルが起きたとき、社内に相談先がなく、復旧が業者の都合次第になる
- ITの見積もりや提案が妥当かどうかを、社内の誰も判断できない
4つとも当てはまる会社も、珍しくないかと思います。この中で最も重要なのは最後の一つです。判断できる人がいない状態では、外注先の提案をそのまま受け入れるしかなく、ベンダーロックインが起きやすい構造になります。
参考記事: システムの外注先は乗り換えられる?中小企業のためのベンダーロックイン対策
「情シスの仕事」は2種類に分かれる
情シスの仕事を分解すると、性質の違う2つに分かれます。
| 種類 | 内容 | 放置すると |
|---|---|---|
| 守りのIT | アカウント・パソコン・ネットワークの管理、セキュリティ、社内ヘルプデスク | トラブルと情報漏えいのリスクが気づかぬ内に増えていく |
| 攻めのIT | 業務の仕組み化、システムの企画・改善、外注先の選定と管理 | 非効率な業務が固定化し、成長のたびに人手で埋めることになる |

兼任担当の会社で最初に切り捨てられるのは、緊急性の低い「攻めのIT」です。しかし経営へのインパクトが大きいのは攻めのITのほうです。守りは現状維持のための仕事ですが、攻めは利益構造を変える仕事だからです。
情シスがいないことの実害は、パソコンの設定に困ることではなく、業務を仕組みで改善する担当が社内に存在しないことにあります。
情シスがいない会社が取れる3つの選択肢
情シス不在を解消する方法は、大きく3つです。
| 選択肢 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| IT担当者を採用する | IT業務が常勤1名分ある規模 | 採用難易度と人件費が高く、1名だと属人化する |
| 案件ごとに都度外注する | 必要なことが単発・明確な場合 | 全体を見る人が不在のまま。判断は結局自社に残る |
| 外部パートナーに継続的に任せる | 常勤1名分の業務量はないが、守りも攻めも必要な場合 | パートナー選びを間違えると依存が生まれる |
それぞれの費用感や詳しい比較は、別記事で解説しました。
参考記事: 外部IT部門とは?社内採用・スポット外注と比べてわかる第三の選択肢
どれを選ぶかの判断基準はシンプルで、「IT の仕事が常勤1名分あるか」と「単発で終わるのか、継続的なのか」の2点です。中小企業の多くは「常勤1名分はないが、継続的」に該当します。この組み合わせに対する選択肢でも、都度外注している会社も少なくありません。

まず始めるべき棚卸し4項目
どの選択肢を選ぶにしても、最初の一歩は同じです。現状の棚卸しから始めます。
- 全社で使っているサービスとアカウントの一覧はあるか?
- サーバー・ドメインの契約は誰の名義で、費用はいくら払っているか?
- システムの外注先と、契約内容・納品物を把握しているか?
- 特定の人にしかできない業務は、どこにいくつあるか?
地味な作業ですが、この4つに答えられる状態を作るだけで、トラブル対応も外注先との交渉も格段に進めやすくなります。答えられない項目が多いほど、誰かが全体を見る体制づくりを急ぐべきサインです。
棚卸しは、いまの外注先との対立とは異なります。「社内の管理体制を整えたいので、契約とアカウントの一覧をいただけますか」という伝え方であれば、協力を得やすく、外注先にとっても引き継ぎ資料の整理になります。
情シス不在に関するよくある質問
Q. 兼任担当のままでは駄目ですか?
守りのITだけなら、当面は兼任でも回ります。ただし兼任者は本来業務を持っているため、業務の仕組み化といった「攻めのIT」まで手が回ることが難しいのが実情です。事業を仕組みで伸ばしたい段階に入ったら、兼任体制の見直し時期といえます。
Q. IT担当者を採用するのと外部に任せるのは、どちらが安いですか?
業務量によります。IT業務が常勤1名分に満たない場合、採用すると稼働していない時間にも人件費が発生するため、必要な分だけ外部に任せるほうが総額は抑えやすくなります。逆に常勤1名分を超えているなら、採用が合理的です。ただし、コスト以外で属人化・スキルといった考えるべき別軸があります。
Q. 何から相談すればいいかも、わからない状態です
その状態のままで問題ありません。「何に困っているか」を言語化するところからが、外部パートナーの仕事です。本記事に示した棚卸し4項目に答えられない、という状態自体がそのまま相談内容になります。
まとめ: 情シス不在でもとれる選択肢は存在する
情シス不在の実害は、パソコンの設定に困ることではなく、ITの記録と判断が個人に依存し、業務を仕組みで改善する担当が存在しないことです。
選択肢は、採用・都度外注・外部パートナーの3つ。判断基準は「常勤1名分の業務量があるか」「単発か、継続か」の2点です。どれを選ぶ場合も、まずは本記事の棚卸し4項目の確認から始めてみてください。
外部に任せることは、ITを手放すことではありません。記録と判断を自社の手元に取り戻し、いつでも選び直せる状態を保つための体制づくりです。
ハイファイブクリエイトは「中小企業のための外部IT部門」として、守りと攻めの両方を継続的に担うサービスを提供しています。詳しくは解説記事「外部IT部門とは?」をご覧ください。






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