日本語で作られたウェブサイトを英語化したい、多言語対応したい、という要望があがったときに考える方法として、例えば英語版のサイト、中国語のサイト、といったように日本語のサイトをベースとして複製し、各国向けに翻訳したテキストを用意するという方法や、Google 翻訳を埋め込んで無料で自動翻訳する方法などがあります。
一方、自動的に翻訳してくれるサービスを使ってウェブサイトを多言語対応するという方法を採用することで、各国毎のサイトを複製して作成する必要がなく、また更新作業も国ごとの記事を作成しなくていいという運用上のメリットもあります。さらに、自動翻訳後に部分的に手動で修正したい場合に編集機能を提供しているサービスもあります。
今回は、自動的に翻訳するサービスについて、サービス毎の特徴、価格、機能といった観点で比較します。
目次
自動的に多言語対応し、翻訳されたテキストを編集できるサービス一覧
今まで主に英語化、多言語化、というと、各ページを手動で翻訳する方法が一般的でしたが、この方法では確実に翻訳品質を保つことができる一方で、各ページの翻訳作業に時間と手間がかかるという労力とコストの面での懸念材料がありました。
その手間を軽減する方法として、ウェブサイトを自動的に多言語に翻訳し、さらに部分的に翻訳を修正したい箇所は編集できる機能を有したサービスがあります。多言語化に予算・人員を割けないという場合はこのようなサービスを利用することで、比較的安価に多言語化が可能です。
以下が主要なサービス一覧です。
サービス名 | 価格 | 多言語対応の方法 | 編集機能の有無 | 特徴・珍しい機能 | サービス開始時期 | 利用者数 |
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GTranslate | 月額9.99ドルから | 自動翻訳と手動翻訳 | 有り | URL 翻訳、Google ニューラル機械翻訳、検索エンジンフレンドリー | 2008年 | 50万以上 |
Localize | 月額50ドルから | 自動翻訳と手動翻訳 | 有り | Web アプリ対応、パフォーマンス向上のための翻訳メモリ、Google Glossary Sync 対応、画像翻訳 | 2015年 | 不明 |
Bablic | 月額24ドルから | 自動翻訳と手動翻訳 | 有り | 履歴管理、コンテキストベースの翻訳、検索エンジンフレンドリー | 不明 | 不明 |
Weglot | 月額15ユーロから | 自動翻訳と手動翻訳 | 有り | 翻訳の依頼、検索エンジンフレンドリー、チームメンバー管理 | 2016年 | 6万以上 |
ConveyThis | 月額7.5ドルから | 自動翻訳と手動翻訳 | 有り | PDF 翻訳、検索エンジンフレンドリー、サイトパフォーマンス高速化 | 2018年 | 3万以上 |
一つずつ見ていきましょう。
GTranslate
GTranslate – Website Translator: Translate Your Website
GTranslateは、ニューラル機会翻訳による自動翻訳後、必要な場所を手動で翻訳を編集することが可能なウェブサイト多言語翻訳サービスです。
無料版はGoogle と Bing をベースにした機械翻訳による自動翻訳ですが、有料版では Google のニューラル機械翻訳による自動翻訳となり、翻訳品質の高さが特徴です。Googleのニューラル機械翻訳 は、Googleが開発した人工知能を使用した自然言語処理技術で、深層学習を使用して高度な自然言語処理を実現しています。
URL 翻訳により、URL 自体をローカライズ言語に切り替えることが可能です。また、検索エンジン向けに各言語毎のサブドメインを作成したり、各言語ごとのドメインを保持することができます。
最安プランは9.99ドル/月となり、2言語までです。ただし、PVや翻訳言語数の制限はありません。多言語対応の場合は19.99ドル/月より全ての言語が利用可能です。URL 翻訳機能は29.99ドル/月から利用できます。
以前有料版を利用したレポートを書きました。
参照: サイト多言語化のGtranslate有料版を使ってみた感想
Localize
Localize は、多言語対応のウェブサイトやアプリケーションの翻訳を自動化するためのクラウドベースの翻訳サービスです。
翻訳管理システムにより、機械翻訳および人間による翻訳両方の追加・管理・編集を簡単に行えるよう設計されています。また、翻訳履歴にアクセスでき、以前のバージョンに戻すことも可能です。
そして、Google 翻訳で利用できる用語集機能の一つである「Google Glossary Sync」に対応しています。この機能により、ユーザーが作成した用語集を Google アカウントに保存し、異なるデバイスやブラウザで同期します。さらに、同じ用語集を複数のデバイスで共有することや、複数の人が同じ用語集を共有することも可能です。よって、用語集の作成や編集が容易になり、翻訳作業の効率化に役立ちます。
月50ドルの最安プランでは対応言語1つ、10万PV/月、200万語/月です。多言語対応の場合は4言語対応可能な一つ上のプランが275ドル/月となっています。ウェブサイトに加えて、ウェブアプリも対応したいというようなケースでは非常に有力な選択肢になってくるでしょう。
Bablic
Website Translation – Translate Your Website – Bablic
Bablicは、多言語対応のウェブサイトを翻訳するためのクラウドベースのサービスです。
自動翻訳後に手動で翻訳の編集が可能です。また、リアルタイム翻訳プレビュー機能により、リアルタイムで翻訳されたウェブサイトやアプリケーションをプレビューすることができ、翻訳の品質を確認しながらの作業ができます。
最安のプランは月額24ドルとなっており、2言語まで、15万PV/月、15万語の無料機械翻訳という条件です。多言語対応する場合は、7言語まで対応し、SEO機能がついてくる一つ上の66ドルのプランが良さそうです。
Weglot
Weglot | ウェブサイトを翻訳 – WordPress、Shopifyなどのサイトを多言語化
Weglot は多言語対応するための基本的な機能を揃えており、簡単な設定ですぐに多言語化が可能です。
機械翻訳は マイクロソフト、DeepL、Google を利用しており、翻訳後の編集は管理画面から実施できます。管理画面ではウェブサイト上でのテキストを直接編集する機能があるため、翻訳後の見え方を確認しながら編集することができます。
用語集登録も備えているため、固有名詞や特定の翻訳にしたいワードは一度登録しておけば逐一翻訳を編集しなくて済みます。
最安プランは15ユーロ/月となり、翻訳言語数1つ、1万語まで。3言語&5万語までだと29ユーロ、5言語&20万語までで79ユーロとなります。79ユーロだとチームメンバー管理機能や URL の翻訳機能といった機能が利用できるようになります。
ConveyThis
ウェブサイトのウィジェットを翻訳する ⭐️ ConveyThis Translator
ConveyThis は比較的安価にウェブサイトを多言語対応するためのソリューションです。
基本的な機能として自動翻訳、手動翻訳編集、検索エンジン対応などを有しており、さらにPDF 翻訳や高速パフォーマンス最適化などの機能も含んでおり、ノーコードで実施可能です。
最安プランは7.5ドル/月で1言語、1万PV/月、1万語です。多言語に対応したい場合は3言語、5万PV/月、5万ワードが15ドル、5言語、10万PV/月、10万ワードが25ドル、9言語、10万PV/月、20万ワードが45ドルというようなプラン構成で、他のサービスと比較しても比較的安価に始められます。
サービスを利用してノーコードかつ簡単に多言語対応する
以上、自動で翻訳し、さらに手動でも翻訳されたテキストを編集できる機能のついたサービスのご紹介でした。多くは1行 JavaScript を貼り付ける、DNS を変更する、API キーを連携するという形でサービス開始ができるため、開発者の手間をかけずに多言語対応を始めることが可能です。
今回の自動翻訳であれば、従来の各言語のページを作成するという手間を考えると、大幅に手間が軽減できることとなります。特に、EC サイトやメディアサイト等、日々ページが公開されるサイトの場合、都度各言語のページを制作していると時間もコストもかかります。その場合はこのような「自動翻訳+必要な部分だけ手動翻訳」という方法を採用することで大きく労力を減らせることができます。
「まずは英語から」「その後は複数の言語に対応したい」という場合でも、プランのアップグレードで対応できることが多いため、小さく初めて大きく育てていくことができます。
サービスがいくつかあるため、提供されている機能やPVや言語数といった制限を比較し、将来手的な面も踏まえて自分たちにあったサービス先を利用するのが望ましいと言えます。
池田大輝 says
英語標記のソフトウェアのマニュアルを書こうとして、このブログに辿り着きました。
非常に参考になる内容、ありがとうございます。
もしも知っていたら教えて頂けると有り難いと思い、以下に質問させて頂きます。
(長文を失礼します。)
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書こうとしているマニュアルは英語なのですが、英語が不得意な人のために 機械翻訳などを使って日本語表示もできたらいいな、と考えています。
最近のブラウザの機械翻訳(ChromeでのGoogle翻訳など)は、元の英語をシンプルな構文にしておけばかなり良い品質で翻訳してくれるので非常に有りがたく、ブラウザの機械翻訳を使ってもらうだけでも良いと考えています。
しかし、ブラウザの機械翻訳については一つだけ困っていることがあります。
英語のソフトなのでGUIは英語なのに、そのGUIの部分まで日本語訳してしまうのです。
そうするとGUIの標記と異なってしまって逆にわかりにくいので、その部分は英語のままにしてもらいたいのです。
ちなみに、GUI部分はspanタグで囲まれ、guilabelというClassを持っています。ネットで「translation=noという属性を与えれば、Google翻訳で翻訳されなくなる」という情報を見つけたので試してみたのですが、「そのspanタグ内は確かに英語のままにしてくれるものの、文の中の語順がメチャクチャになる」ということがわかり、断念しました。
この様に、ブラウザの機械翻訳ではうまくいかなさそうなので今は諦めているのですが、本記事を見て、「ウェブサイトを自動的に多言語対応する各サービスであれば、この点にうまく対応しているのではないか」と考えている次第です。
この辺りについて、なにかご存知であれば教えて頂けませんか?
池田祐太郎 says
本記事で紹介したような翻訳データを編集できるサービスであれば、GUI部分は機械翻訳せずに表示したい文言を設定することで管理ができるかと思います。
気軽に試せる月額費用のためいくつか使ってみて、条件をクリアした使い勝手の良いサービスがどれなのか比較してみることをお勧めします。