個々最近メディアを騒がせている、医療情報サイトのWELQ(ウェルク)。
このウェブサイトは「キュレーションメディア」と言われており、医療を中心に記事がまとめられたサイトです。
記事投稿者はウェルクオフィシャルの投稿に加え一般ユーザーからも投稿を受付ていたようです。
そしてウェルクは横浜ベイスターズを所有する株式会社DeNAが運営しています。
そんな大企業が運営する情報サイトで起こった問題をまとめてみました。
目次
ウェルクの何が問題なのか?
1. 「死にたい」というキーワードで上位表示された記事にアフィリエイトリンク
「死にたい」という検索キーワードでウェルクの記事が上位表示され、その記事内に特定のアフィリエイトリンクがあり問題となりました。
この件についてSEOの専門家辻正浩さんは「これは最悪」として紹介しています。
[死 にたい]でSEOされたwelq(運営:DeNA)の大きな問題
2. 医学知識のない人が書く適当なデマ記事
肩こりに関する記事では、肩こりの原因を「幽霊が原因かも」と全く科学的根拠のない表記がありました。幽霊が原因って・・・どう考えてもありえないでしょう。普通に考えたら「なんだこれ?おかしい!」とわかりますが、本当に悩んでいる人は信じてしまうかもしれません。
また、他のサイトから文章を盗んできて、重複とみなされないよう意図的にリライトして掲載していました。
そして、こういった記事を書いているのが医療関係者でも医学知識がある方でもなく、ほとんどがクラウドソーシングサービスから募集した素人のライターだったのです。
「WELQに掲載されている(広告や連載を除く)記事の8〜9割は、外部ライターに書かせたものです」とDeNA社員のBさんは明かす。
DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言
検索キーワードから検索されているキーワードをもとに一日に100記事とコンテンツを大量生産し、文字量8000文字超という十分な文字量にすることで検索結果の上部に表示される対策をしていたのではないかと考えられます。
3. パクリを推奨&SEOのため記事は書き直し
上記にも触れましたが、記事自体は他のサイトからもってきたものを使っています。しかしそのまま使う分には著作権でNGですし、引用として使うと記事全体が引用のオンパレードですからおかしなことになってしまいます。
そこでパクってきた文章を「リライト(書き直し)」してオリジナル風の文章にでっちあげます。
本来は引用として表記しなければいけない文章を引用とみなされないようにわざわざ書き直ししているのだから悪質。そしてリライト方法のコツとしたマニュアルもあったようです。
DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言
自分も仕事上でクラウドソーシングサービスを使ってライターさんに記事発注をしていますが、このようなパクリは一切禁止しています。
引用はOK。ただし、参照先を明確にしたり、文章の主従関係ははっきりさせた上。
ウェルク以外にも同じようなことをやっているサイトは山のようにあるはずですが、DeNAという球団も擁する東証一部上場の企業が組織的に行っていたことや、人名に関わる医療という分野でSEOで上位表示を目指し記事内でアフィリエイトリンクを貼るという悪質な行為は許されるべきものではないです。
サイバーエージェントやYahoo!も運営のキュレーションメディアの記事を非表示にしたと発表がありました。
東京新聞:サイト記事の公開中止相次ぐ IT大手、運営にずさんさも:経済(TOKYO Web)
なんのために行っていたのか?
ウェルクはじめ、DeNAが運営している他キュレーションメディアのiemoやMARYなど計10サイトを含む事業は「キュレーションプラットフォーム事業」として、この1年で利用者は2倍以上、事業全体の売上は3倍以上に急激に伸びている事業です。
iemoとMARYを50億円で買収したのが2014年10月。そこから約2年で事業全体で4半期で15億円の売上を生む事業に発展させました。
特にウェルクに関しては前身がMedエッジという医療情報サイトからのリニューアルという形でのスタートでしたが、正式なスタートは2016年2月。まだ1年経過していなくここ数ヶ月で急成長をしているメディアサイトでした。
12/1のあと一気に株価下がってます。
「こうやってやれば検索順位あがるぞ〜!」という効果のあったSEOを他のキュレーションメディアにも適応させ水平展開させることで、効率よく事業拡大していたんでしょう。
そのためか、今回のウェルク問題と同時にMARY以外のキュレーションメディアも同時に非公開となりました。
どうやって上位表示を実現したのか(SEO)
ウェルクが閉鎖される直前に登録して確認した方がいらっしゃいました。
H系のタグの使い方
記事タイトルにh1ひとつのみ。明確な文字数が推奨。h1が複数あると効果が薄まるので1ページに一つというルール。
また、大見出し、中見出し、小見出しをプルダウンで選択できるようになっています。そしてそのh2が目次と連携しているため、自動で目次が生成されSEO的にも効果が望めます。
画像利用による滞在時間の獲得
Googleが明示しているのではないのですが、ページの滞在時間は検索順位に影響しているのではないかという説が強いです。
SEOに有効なWebサイトの滞在時間を簡単に延ばす方法 | ITを利用した仕組み作りのプロ集団:「近道」をコンセプトにしたITコンサルティングの株式会社ドリームハイブ
そこでウェルクでは画像を多用することにより、ユーザーをとどまらせ滞在時間を伸ばしていたと考えられます。
特にこういった医療情報は説明が難しく、テキスト量が多くなりがちです。同じようなことを説明していても滞在時間が30秒のサイトと3分のサイトがあったらGoogleは3分の方を高評価すると考えるのが妥当でしょう。
1文字0.5円という魔法
そして記事の大量生産です。
1文字0.5円。ウェルクの8000文字だと4000円です。
ライティングを生業としている方からみたら1文字0.5円などありえなさすぎなわけですが、主婦にとってはお小遣い稼ぎにはちょうどいい単価。
ウェブに落ちている情報を断片的に広いリライトするのがメインの業務のため、文字数を多くすればするほど主婦の稼ぎは増えSEOにもメリットがあるお互い良い関係に。
もし、クライアントから「ライターさんの費用、1文字0.5円でお願いね」って言われたら、自分なら引き受けません。
なぜならクオリティが担保できないから。そんな低料金で依頼はそもそもありえない金額ですし、その金額でやるという人がいても完成物に期待できないので依頼できません。
2000文字の記事を書いて頂くとしても1000円ですよ・・・そんな記事はオリジナルでは到底ありえないわけで。
なのでどこかから盗んできた記事を書き直して構成かえて、という感じにしか対応できないです。
自分がもし内部にいたらどうしていたか
こんな状態では怖くて運営できません。MARYやiemoという媒体であればまだしも人の命に関わる情報を扱う以上センシティブですし、DeNAという上場企業運営のサイトでテキトーな情報を垂れ流しにするなどリスキーすぎます。
外野だから客観的に見れるからいえますが、内部はわかっている人がいたとしてもとめられなかったんでしょうね。
一部Googleが悪いという意見もありました。
しかし、例えばこれでGoogleが手動による対応で一企業の運営するサイトを表示させないなどの措置をしたら公平なインターネットではなくなってしまいそれこそ大きな問題です。
SEO的には非常にうまく、狡猾に対策をしていました。
結果、この短期間で軒並み高順位がウェルク表示になっていましたから。
担当者としては、「お、このやりかたで上位表示できた!よーし他のサイトにも展開しよう」となって自分のやっていることに意義があると思ってやっていたのではないかと推測します。
ウェルクの復活はあるのか
以前から医療関係者の間ではウェルクの存在は問題視されていたようです。
http://www.gohongi-beauty.jp/blog/?p=19845
悪いのは誰か?
今回の一連の報道では表に一切でてきていないが、元iemoのCEOでDeNAに買収されたあとは執行役員となった村田マリ氏がキュレーションメディア事業を推し進めていた可能性は高い。
村田氏の肩書きとしては、
- 執行役員 メディア統括部長
- Palette事業推進統括部長
- iemo 株式会社代表取締役 CEO
- 株式会社Find Travel代表取締役社長
と複数の肩書きを持つ。
パレットはキュレーションメディアのプラットフォーム。
そこの事業部長の
山本敏史氏は「キュレーション企画統括部 グロースハック部 部長」。グロースハックを取り入れてキュレーションメディアのPDCAをしていたのかと思う。
内部の事情はわかりませんが、アクセスも売上も増えているこの状況でさらなる勢いでグロースハックしていたのかと思うと悲しいものがありますね。
キュレーションメディアの転換期となるか
ウェルク自体はもう閉鎖するのが一番です。この状態から膨大な記事を医療関係者による監修をするだけで時間もお金もかかりますし、そもそもこの状況で「私ウェルクの監修します!」と手を上げて監修してくれる医療関係者がいるのでしょうか?
今回の一件でキュレーションメディアを運営しているサイトはどこも見直しているはずです。
12月中旬にはニンテンドーとの協業のスマートフォンアプリ「スーパーマリオラン」の公開も控えていますがこの状況で任天堂は激おこでしょうね・・・
まだ、目が離せません。
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